明治の2大書籍の作者スマイルズ

サミュエル・スマイルズは、19世紀初頭から20世紀にかけて活躍をした英国の医師であり、作家であった人物です。

日本においてもスマイルズは非常に人気が高く、福沢諭吉の「学問ノススメ」と並んで明治の二大書籍として挙げられている「西国立志編」を著した人物として知られています。

この「西国立志編」は別名「自助論」とも言われており、明治維新の直後の先行き不透明な環境に置かれていた時代にどのように国や個人のアイデンティティを作っていくかということを提唱しました。

本のことはあまり詳しく知らないという人も「天は自ら助くる者を助く」という言葉は知っていると思いますが、これは自助論の序文に登場する一節です。

英国や日本以外の国にもサミュエル・スマイルズの著書は多数出版されており、19世紀同様に不安定な時代に置かれた若い世代にとって非常に大きな道標となってくれます。

「スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫」は、そうしたかつて明治期に日本人の心を掴んだ書籍を新たに翻訳し、読みやすく現代人にもわかりやすい形でまとめた新装版です。

書籍の中には歴史上の偉人が残した名言が多数引用されており、その一つ一つを読んでいくだけでもかなり教養を高められます。

同時に歴史に名前は残っていないものの、偉大な行いをした無名の人物のエピソードなども紹介されており、「自助」の精神の尊さを教えてくれます。

21世紀でどう自助論を読むか

「自助論」は文字通り「自分自身で自分を助ける」という思想のことです。
「天は自ら助くる者を助く」という言葉に象徴されるように、自分自身で動こうとしない人間が周囲から助けられるということはありません。

サミュエル・スマイルズが残した名言の中には「人間をつくるのは安楽ではなく努力」「やり続けていればチャンスは必ず訪れる」といったかなり前向きなものが多く、20代前後の若者にとっては希望になるのかもしれません。

しかし一方で全てを「自助」で片付けてしまうことは、失敗をした人や思うように人生を送ることができていない人を「努力してこなかったから本人のせい」と切り捨ててしまうことにもつながってしまいます。

古い著書であるということから解説が不十分な部分も多く、行間は自分で読み取らなくてはいけないというところも多くあります。

逆に言うと20代が読む自助論と40代で読む自助論には解釈が異なる部分も生じてくるということです。
若い頃に一度手にとって見たことがあるという人が、再び読み返してみるということもおすすめできます。

自助論のもう一つのテーマは「儲けばかりを考えていては偉業は達成できない」ということで、こちらは現在でも共感しやすいテーマと言えます。