大リーガーから営業マンに転身した伝説の男性
「私はどうして販売外交に成功したか」は、一度は大リーガーとして将来を有望視された男性であるフランク・ベトガーが夢破れてから営業マンに転職し、そこで新たな成功を手にするというサクセスストーリーについて書いた本です。
著書が出版されたのは1964年ですが、以後着々と発行部数を伸ばし続けているロングセラー書籍であり、現在28版を重ねるまでになっています。
フランク・ベトガーが大リーガーをやめてから付いた仕事は、保険の外交員です。
もともとプロ野球選手になるためにそれまでの人生を送ってきたということと、生来の性格から口下手で人見知りというハンディを背負ってのスタートでした。
普通ならばずっと夢を見てきた野球の世界から解雇され、まったく自分の適性にあっていない仕事をしなくてはいけなくなったということに落ち込んでも全く不思議ではないところですが、この本ではそうした卑屈な面は一切見せていません。
「私はどうして販売外交に成功したか」でテーマにしているのは一貫して「パッション」で、営業の仕事を始めてから成績が出るまで、ずっと前向きな姿勢で続けてきたということを伝えています。
語り口が非常に正直ということもあって文章に信頼感があり、読んでいて「ここまで言っていいんだろうか」と思ってしまうくらい惜しげなく自分の営業方法を披露しています。
異色の経歴を持ちながら、晩年には有名な経済学者や財界人から一目置かれる存在になっており、時代や国を問わずセールスの仕事をしている人全てに参考になる、普遍的で力強い哲学が感じられます。
お客さんの心を揺さぶる「パッション」とは
ビジネス書はあまたありますが、その多くは営業をするときのマナーやテクニックなど視野の短い方法論を扱ったものです。
しかし「私はどうして販売外交に成功したか」ではそうしたテクニカルなセールスの裏側にある心の方に重点を置いており、それが世界中でベストセラーとして愛される理由なのでしょう。
営業では「25年間に4万回人を訪問した」としており、前向きな気持ちをそのまま行動に結びつけていることがわかります。
もちろん成功した事例ばかりではなく失敗した例も赤裸々に綴っており、中には事実としてはあまりにも感動的なエピソードまでも登場しています。
ビジネス書ではありますが、特殊な環境を生き抜いた一人の男性の人生譚として読んでも十分に面白く、現在仕事に悩んでいる人にも大きなヒントになるのではないでしょうか。
営業の仕事でネックとなるのは「拒否される恐怖」です。
それをフランク・ベトガーはどのような考えでクリアしてきたかや、そこからどんな目標を持つようになったかといったことをこの本で述べています。