世の中は合理的にはできていないことがわかる本

「世界は感情で動く : 行動経済学からみる脳のトラップ」は、統計や実験による行動経済学の観点から、世の中に起こる事象をまとめた書籍です。

私達は普段の生活の中で数多くの経済活動をしていますが、それは必ずしも合理的な判断によって行っているわけではありません。

例えばふらりと街を歩いていたときに見かけた品物を衝動的に買ってしまったり、自分の周囲で同じようなものを持っている人がいるのでなんとなく自分でも買ってみた、というような具合です。

他にも「自分の予想はいつも当たる」や「記憶力がよく幼い時の記憶も明確に残っている」といった経験は、多くの人にあるのではないかと思います。

個人レベルで見るとそうした感情による経済活動は特に問題のないありふれたことです。
しかし世の中という広い目で見た時、そうした感情的な経済行動が、時に政治やマクロな経済動向を形成していたりします。

行動経済学とはそうした集団の経済行動を過去の事例をもとに研究したもので、必ずしも合理的でさえあれば世の中に受け入れられるわけではない、という疑問を明らかなものにしています。

普段から「自分はいつももっとも合理的と思うことだけをしている」と思っている人ほど、案外こうした感情のトラップにかかってしまっている事が多いので、自分の行動を振り返るという意味で一読をしてもらいたい、おすすめの書籍です。

不確実な世の中になると人は非合理的な行動に出る

著者はダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーの二人で、主に1970年代後半~1980年代前半にかけての経済行動を詳しく研究してきた学者です。

研究の結論として、「人は不安定な未来に直面した時に不合理な行動に出る」としており、その傾向をいくつかの規則に分類して解説しています。

具体的には「プロスペクト理論」という、リスクを伴う決定をする時にどういう思考をするかということで、利益と損失の両方を避けられない時にどういう行動をとりやすくなるか、ということを本書の中で示しています。

行動経済学は非常に奥が深く、現在もまだ研究をされている分野ですが、その入門書としてこの本は非常にわかりやすくまとまっています。

セールスや経営の仕事をしている人はもちろんのこと、一般教養としても非常に興味深い内容となっているので、より幅広く読んでもらいたいです。

選挙や会社の人事採用といった現場のような「人を選ぶ」場面においては、必ずしも利益と損失が目に見えるわけではありませんので、直感や感情による曖昧な選択というものが顕著になってきます。

特に株価の予測など大きな視点で見たときの経済学の理解が大きく変わってきますので、一冊読み終わるときには世の中を俯瞰して見ることができるかもしれません。