サラリーマンにお勧めの図書「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」

カナダのビジネスマンが息子に伝えたいことをまとめた本

「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」は、ビジネスマンとして成功をしたカナダの作家G.キングスレイ・ウォードが、息子に宛てて書いた手紙を一冊の本としてまとめたものです。

本が出版されたのは1994年4月のことで、当時父親と同じく企業家を目指していた息子に対し、父の立場でありかつ先輩ビジネスマンである立場から伝えたい言葉を素直に綴っています。

手紙は全部で30通あり、時系列にそって本の中ではまとめられています。
内容は自分自身の学生時代から実社会をスタートさせたこと、企業に勤務してからの人間関係、友人との関係、恋愛や結婚といった半生全てに及んでいます。

その長いビジネスマンとしての人生の中で、自分なりに感じたことや教訓としたことをありのままにつづっており、時折見せる親としての優しさや厳しさに感動をすることもしばしばです。

自分と同じ道を歩もうとしている息子という、男同士の関係ならではの気持ちが表現されており、女性にとっても新しい発見のある良書と言えるでしょう。

父親から息子ということもあって年代的には50代の父親が20代の息子に向けるという形ですが、どの年代で読んでもためになる部分がある、とりわけビジネスをしている人にとっては学ぶところが多い本です。

「父親を超えられない」という思い込みを捨てる

この本が日本で人気が高い理由の一つとして、「父親を超えることができない」というコンプレックスを持っている若い世代が多いということがあります。

現在の日本は長期的なデフレのさなかにあり、父親世代やそのまた父親世代が仕事をしていた頃の好景気の勢いがありません。

そうした時代の中でついつい思い込んでしまうのが「自分は父を超えられない」という思い込みです。
年上を敬ったり立てたりすることと、それ以上の仕事をしてはいけないということは全く異なるのですが、特に成績がよく昔から親の言うことをよく聞いてきた優等生タイプほど、最初から父親の世代は超えられないと思っていたりします。

この本では成功したビジネスマンの父親目線から、これから自分の力で道を切り開いていく息子に対し、そうした「超えられない」という思い込みは捨て、思う存分挑戦をしていってほしいという強い願いが感じられます。

優しさや厳しさだけだけでなく、時折ウィットに富んだ言い回しやジョークなどもあるので、読んでいて楽しい気分にもなるでしょう。

仕事観、家族観、社会観と多くの部分で共感を得られることと思います。
ビジネス書としてだけでなく、これから自分の家庭を持ち父親になろうと考えている人にもとてもおすすめできます。

サラリーマンにお勧めの図書「フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)」

幸福の条件となる「フロー体験」とは

「フロー体験 喜びの現象学」は、世界思想社から出版されているM.チクセントミハイによって著された書籍です。
初版は1996年8月ですが、現在も人気のある自己啓発本として多くの場所で推薦されています。

まず本のタイトルにもなっている「フロー体験」についてですが、これは「一つのことに没頭することにより、他のことが気にならなくなる状態」のことを言います。

もともと作者のチクセントミハイは「楽しみ」や「喜び」といった感情を研究してきた米国の心理学者であり、その中から人生の幸福の要素として導き出されたのが「フロー体験」なのです。

同じ世界思想社からはチクセントミハイの著書として「楽しみの社会学」や「フロー体験とグッドビジネス-仕事と生きがい」「スポーツを楽しむ-フロー理論からのアプローチ」といった書籍が刊行されています。

これらはいずれもフロー体験を主軸にしつつ、人生においてどういった思考や行動をとっていくべきであるか、ということを考察しています。

日本においてもストレス解消の手段として趣味やスポーツに没頭することが勧められていますが、それをより意識して行っていくことにより、科学的根拠に基づいた幸福感を得ることができます。

このフロー体験は別の言い方としてスポーツ選手の「ゾーン」や、宗教や儀式における「エクスタシー」と表現されることもあります。

近年多くのメディアで取り上げられている「発達障害」の一つ「ADHD」において、その特徴の一つに特定のことにこだわってそればかりを行うというものがあるのですが、それもこのフロー体験に深い関わりがあると考えられます。

意図的にフロー体験に入るための方法とは

「ゾーン」や「エクスタシー」と同等なものとしてフロー体験をとらえてしまうと、よほどの修行や鍛錬がなければ体験は難しいのではないかと思ってしまうでしょう。

しかし本来フロー体験は誰でも体感することができることであり、何度も体験をしていくことでより簡単にその状態になることができます。

ポイントとしては「過程に対して明確な目標がある」ということと「行動に対してフィードバックがある」「挑戦と能力が釣り合っている」「行為と意識が融合している」などの条件をクリアするということです。

ただし何か特定のことをすれば誰でも同じようにフロー体験になるというわけではなく、その過程はそれぞれ異なるので自分自身の能力や適性から方法を発見していく、ということが必要になります。

どのようにして自分にとってのフロー体験を見つけるかは本に詳しくパターン別に記載がありますので、ぜひ自己分析をしながら見つけていってください。

サラリーマンにお勧めの図書「スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫」

明治の2大書籍の作者スマイルズ

サミュエル・スマイルズは、19世紀初頭から20世紀にかけて活躍をした英国の医師であり、作家であった人物です。

日本においてもスマイルズは非常に人気が高く、福沢諭吉の「学問ノススメ」と並んで明治の二大書籍として挙げられている「西国立志編」を著した人物として知られています。

この「西国立志編」は別名「自助論」とも言われており、明治維新の直後の先行き不透明な環境に置かれていた時代にどのように国や個人のアイデンティティを作っていくかということを提唱しました。

本のことはあまり詳しく知らないという人も「天は自ら助くる者を助く」という言葉は知っていると思いますが、これは自助論の序文に登場する一節です。

英国や日本以外の国にもサミュエル・スマイルズの著書は多数出版されており、19世紀同様に不安定な時代に置かれた若い世代にとって非常に大きな道標となってくれます。

「スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫」は、そうしたかつて明治期に日本人の心を掴んだ書籍を新たに翻訳し、読みやすく現代人にもわかりやすい形でまとめた新装版です。

書籍の中には歴史上の偉人が残した名言が多数引用されており、その一つ一つを読んでいくだけでもかなり教養を高められます。

同時に歴史に名前は残っていないものの、偉大な行いをした無名の人物のエピソードなども紹介されており、「自助」の精神の尊さを教えてくれます。

21世紀でどう自助論を読むか

「自助論」は文字通り「自分自身で自分を助ける」という思想のことです。
「天は自ら助くる者を助く」という言葉に象徴されるように、自分自身で動こうとしない人間が周囲から助けられるということはありません。

サミュエル・スマイルズが残した名言の中には「人間をつくるのは安楽ではなく努力」「やり続けていればチャンスは必ず訪れる」といったかなり前向きなものが多く、20代前後の若者にとっては希望になるのかもしれません。

しかし一方で全てを「自助」で片付けてしまうことは、失敗をした人や思うように人生を送ることができていない人を「努力してこなかったから本人のせい」と切り捨ててしまうことにもつながってしまいます。

古い著書であるということから解説が不十分な部分も多く、行間は自分で読み取らなくてはいけないというところも多くあります。

逆に言うと20代が読む自助論と40代で読む自助論には解釈が異なる部分も生じてくるということです。
若い頃に一度手にとって見たことがあるという人が、再び読み返してみるということもおすすめできます。

自助論のもう一つのテーマは「儲けばかりを考えていては偉業は達成できない」ということで、こちらは現在でも共感しやすいテーマと言えます。